妄想レポート 3/1海援隊トーク&ライブ(敬称略)

3月1日吉日、日曜日。昼下がりの午後、俺は神奈川、関内に降り立った。はやる心を抑えながら焦って少しもつれる足をドタドタと動かして、訪れたのは関内ホール。今日はいよいよ海援隊トーク&ライブだ。鼻息荒く血中鉄矢濃度を上げながら俺は入り口を「たのもう」とくぐったのである。

 

と、なるはずであった。

 

想像はしていたが、すっかり世間で大ブームのコロナウイルスの影響を受けて、楽しみにしていたトーク&ライブは5月に延期。世間に迎合しやがって。ロックじゃねえぜ!中止じゃなかったのがせめてもの救いだが、すっかり血中鉄矢濃度が下がったおじさんは暖房の効いた部屋でゴロゴロするしかなかった。ゴロゴロしながら白眼ひん剥いて考えるのは「今日のライブ(やってたら)どんなんだったんかな」という愚にもつかない妄想ばかり。あんなんかな、こんなんかなとつらつらと考えながら俺はヨダレを垂らしながらニヤニヤと笑い、俺の海援隊(海綿体)を熱狂させたのであった。

 

せっかくだから、その時考えた「(やってたら)きっとこんなんだったろう」というのをレポートしておく。完全に俺の妄想なので、そこんとこシクヨロ。

 

ステージにライトが灯り、参上つかまつった我らが海援隊の3人。開幕を飾る曲は何かとグッと汗ばむ拳を握りしめた俺の耳に届いたのは、懐かしいイントロ。『スタートライン』だ。

滅多にライブじゃこの曲やらないんじゃないのかなあレアだなあ、と喜んでいたら、なんだかやけに音数が多いことに気がついた。バックバンドはいないし、ギターは中牟田・千葉の2本だけ。

変だなあ、絶対ギターじゃない音もあるよなあと首を傾げながら、改めてステージを見たら、おおなんということだ、千葉の前には燦然と輝くMacBook Pro。そして長身を屈めて、巧みにそいつを操る千葉の姿。なんだかやけにファズったイントロ(やけに長い)を唖然と聴いているうちにようやく歌メロのとば口にたどり着く。鉄矢がスゥとマイクを持ち、歌う。歌う!歌う!歌う!

(イントロ)「♪夜明け前の (一拍) スタートラーイィンー(ハモリ)」(アウトロ)

観客のザワザワが止まらない。まさかカラオケで定番の”歌が始まったと思ったらすぐ終わっちゃった”ネタ(*1)を本家がやるとは思わなかった。鉄矢はニヤニヤと嗤っていて、その顔には無邪気ではなく悪意が満ち満ちている。こいつはたまんねえぜ。俺は拳を振り上げた。

(*1)有名なのは「♪くれーなずーむ街のー(チャンチャンチャン)贈る言葉ー」

その後もふんだんに喋るかと思えば急に歌ったり、ベラベラと喋ってリアル三枚おろしかと喜んでいたら「この話のオチ聞きたけりゃラジオ聴け!ラジオ!」と吐き捨てたり「俺の本を買え!」と前列のおばさまの胸ぐらを掴んだりと鉄矢はもうやりたい放題。中牟田もノリノリでギターをジャイアントスイングしている。観客は総立ちだ。

そんな中、実はそんなに曲を知らない俺は、イントロが流れるたびに隣の爺さんに「これなんて曲っすか?」と訊いて大いに嫌がられたのであった。

 

結局、残念ながら『JODAN JODAN』も『人として』も聴くことは叶わなかったが、初めて生で見た動く鉄矢は躍動感に溢れて、それでいてシックであって、まるでもうCGのようであった。というか、やはりあれはCGだった気がする。プロジェクションマッピングかな。

夢見心地で関内ホールを出て、京浜東北線に揺られる俺の脳裏に焼き付いて何度もリフレインしていたのは千葉の「やっぱりコンピューターは頼りになるっちゃ!」という言葉であったのだった。

それにしても、誰も見てないブログって好き勝手に書けて、本当にいいもんだよな。