【針村譲二の世界】フォークロック小説



『泥の乱』第1回 仁間 満


 蝉の泣く日、黒いコートの男は寂しき四番街を激しい雨の日の女の如く通り過ぎて、ジプシーに会いに行った。だが、彼女はいつもの朝にドアを開けて愚かな風に吹かれて、スペイン草のブーツを履いた悪魔の使者と悪夢のドライブへ出かけてしまっていた。そう、北国の少女であるケイティは行ってしまったのだ。


 その親指トムのブルースのようにいつも悲しむ男は廃墟の街を一人彷徨いながら、朝の雨のバケツを浴びていると、河の流れを見つめている五人の信者達と三人の天使に気がついた。彼等は入江に沿って、哀れな移民のようにハッティ・キャロルの寂しい死を見つめて哀しい別れを告げていた。そういえばキャロルは、
「お願いヘンリー夫人。僕の墓をきれいにして。」
と、いつもヒョウ皮のふちなし帽を気にしながら、そう言っていた。


 戦争の親玉であった彼を想い出すと、コートの男は怒りの涙をぶちまけて、
「俺は寂しいホーボーだ。まったく、何もないことが多すぎる。そうだ、アカプルコへ行こう。」
と、ブルーにこんがらがって二人の兵士とどこかへ行ってしまった。漂流者の逃亡のようでもあったが、彼は、
「彼女に会ったら、よろしく。」
というマリーへのメッセージを残して、自惚れの病に苦しみながら、その酒場を去っていったのだ。