北から帰ってきた。
愛用していたウォレットチェーンがぶっ壊れたので修理に出す。
よくあることだ。あらゆるものはやってきて、そして去っていく。そういうものだ。
なじみのバーで強めの酒を飲みつつ、今回の旅を振り返っていると一本の電話が鳴った。頼んでおいたギターのリペアが終わったらしい。受け取りに向かう。
このギターはオレの知人でもある、伝説のミュージシャン・針村譲二が愛用していたものだ。一見したところエピフォンのもののようだが、実際のところは「エピノ」らしい。どう見てもエピフォンなのだが、これは絶対にエピノであると奴は頑として譲らなかった。懐かしい思い出だ。
数々の名曲を生み出したこいつもオレが受け取った時は弦がコテンパンに錆び付き、すっかり輝きは褪せてしまっていた。
このままにしておくのは忍びないので、知る人ぞ知る現代の名工に「なんとかしてくれないか」と頼み込んだ。幾許かの交渉の末、ようやく名工は首を縦に振り、そしてまたこの名器に新たな命が吹き込まれたのだった。
修理代は1000円だった。