復刻版:「対談 あたらしいアナタになるために」

毎年恒例新春突撃取材。今年も、買物番長の貝田以蔵さんに突撃取材をした。(取材・構成=松浪勇太郎)

――どうも、こんにちは。
「ぅあっ、なんですか、いきなり。今から買物に行こうとしてたのに」
――どうですか、最近買物の方は。
「そうだな、話してやらんこともないが最近だとスツールが気になるところだね」
――スツールですか。
「ああ、そうだ。年末ひょんなことから部屋に友人を招く事があってね。招くはいいが困った事にうちには座椅子ひとつしかないんだ。大切な友人を床っぺたに座らせることに気が滅入ってしまってね」
――ずいぶん寂しい部屋ですね。女性を呼ぶときどうするんですか。というか、呼ぼうとすらしてないでしょう。
「バカにすんな。ときどき呼ぶぞ。『おっぱいがおっきくて、髪はショートで、できれば若めの子をお願いします』って」
――それは特殊なケースですね。
「若め、っつってんのに来たためしがねえ。てめえ生理アガってんじゃねえか!ってのまで来やがる!いいか、アガってんだぞ!アガりだぞ!」
――インタビュー進めてもよろしいですか。
「オーライ」
――スツールの話ですよね。
「ああそうだったね。ソーリーベイビー。ところでその懸案のスツールだが、探しているのだがなかなか値段に見合ったものがなくてね。目下探索中だ。まるでリスが冬篭りの準備をするようにね」
――ほう、それはそれは。他にはなにか?
「あとはパスタケースだね」
――おや、ずいぶんとオシャレじゃないですか。
「サンキュー。先日実際に見に行ってけっこういいのを見つけてね。まあ結局買うのを止めたよ」
――なんでやめちゃうんですか。
「だってさ、わりとケースってデカいんだよ。後々ジャマになりそうだな、って。それに私は太さの違うパスタを交互に食べたりするんだよ。それを1つのケースに入れちゃったりしたら、食感がくっちゃらはぴはぴになっちゃうよ」
――あれ、じゃあ結局パスタってふだんどうしてるんですか。
「袋そのままにして輪ゴムでぐるぐる巻きよ」
――ずいぶんとアグレッシブですね。そういえばついこないだも買物したらしいじゃないですか。
「ついさっきもブラリと買物に行って洋服屋入ったんだけど、うっかり初売りセール真っ最中でね。まあすごい人でね、モノなんてまったく見られなかったよ」
――不景気とは言いますが、まだまだ消費は活発なんですね。
「とにかくもみくちゃもいいとこさ。店の中をただ一巡しただけで出ようとしたんだが思わぬ出来事もあってね」
――おや。と、言いますと?
「年始ということもあって街はカップルでごった返していたんだ。店もギュウギュウでいい加減ウンザリしていたときに、突然私の左手をムギュッと摑む手があったんだ。驚いて振り向くとまったく知らない女性なんだ。どうやら彼氏と間違えてしまったらしいんだ。本当に吃驚したが、同時に恐怖も覚えたね」
――大変だ。それで一体どうされたんですか。思わずご購入ですか。
「ほんの一瞬『殺されるのかな?』と思ったよ。だが、残念ながら相手の女の子がすいませんって言うまでの数秒の間に『あれ、逆ナンかな?』って10%ほど考えてしまった自分を殴ってやりたい気持ちでいっぱいさ」
――恥を知って頂きたいですね。
「ずいぶんな言いっぷりだね。もういい!インタビューは終わりだ!帰ってママのゴハン食べるんだ!」
――マザコンは嫌われちゃいますよ。
「ああ、ママのバッファローウイングは最高さ!」