もしこの夏がソニックだったらあの娘、どんなサマーするだろう2016



2016年8月20日、俺は第2の故郷幕張に5年ぶりに降り立った。幕張は、抜けるような曇天と目の覚めるような大雨が降りしきっておった。
「相変わらずシケた街だぜ!ペッ!」
俺は5年前とまったく同じセリフを吐きながら一路幕張メッセ方面へと向かったのだった。


水曜日のカンパネラ
一回くらい観ておこうかなと思ったが、前回に引き続き今回もバッチリかました寝違えと400メートルリレーには勝てず、おじさんはエアコンのよく効いた部屋でゴロゴロして負った。たぶんきっとこんな感じなんだろうなぁ、とボンヤリしながら時間は過ぎていくのであった。


ゲスの極み乙女。
これもやっぱり一回くらいは観ておいた方がいいよね、と思いつつもやはり寝違えと一切進んでいない準備には勝てず、おじさんは継続してエアコン部屋でゴロゴロしていた。「文明の利器最高!」と叫んだことは言うまでもない。


DIGITALISM
観るつもりであった。だが、結局準備をロクにせず飛び出して列車に飛び乗った俺はいやに大きいリュックを背負ってガッツンガッツンとライブを見るのにすっかり嫌気がさし、同行したスットコ野郎の言うがままにマリンステージへと向かったのであった。


星野源
マリンステージのアリーナだかスタンドだか忘れたが2階席でゆったりと鑑賞。腰を落ち着けたときにはすでにライブの半ばであったが、そんなことはもう俺らは気にしない。おじさんはそんなことでは慌てない。走れないからゆっくり歩いて会場に入るのだ。彼はそんなおじさんの俺らにとって同世代の星。星野だけに星、なのだ。俺はもう自分のことを松坂世代などと呼ぶことはしない。もはや今は星野世代と吹聴しているのだ。『Crazy Crazy』『SUN』とヒットチューンをズンドコズンドコとカマされ、おじさんはすでに昇天寸前。だが俺の寝違えは肩より上に腕を振り上げてくれることを許してくれない。腹のうちにマグマのような衝動を蓄えていると、頭までポーッとしてきて本当に昇天寸前。なぜならば、さっきまで曇天極まりなかったのに急にお日さまがカンカン照りになりやがってイスの背もたれもアッチッチになったからだ。思わず「源くーん!」とドドメ色の声援を飛ばしたことは言うまでもない。


WEEZER
今回の本目的はきゃつらだ。なんだかんだで初ライブを楽しみにワクワクしながら鑑賞。その2日前に単独をやっていたことは知っていたが気づかなかったふりをした。大人になるというのはそういうことだ。
スタートは『California Kids』だろ、と思い込んでいたら案の定イントロが聴こえてきまして「ほーらほーら!」と息巻いたら急に『Hush Pipe』に変わっておじさんはずっこけた。そして恥ずかしかった。初めてライブで聴くウィーのザーは、噂通りいい意味で全体的に「ドバッ」とか「ムハッ」といった感じの音でボーカルとかそれぞれの楽器の音がよく聴こえるともいえるし聴こえないともいえるかもしれなかった。娘っこのミア嬢による演奏だったりスコットのマーフィーによる泉谷しげるばりの乱入だったり、そして何よりもコノヤロウ!とばかりのヒットチューン連打に俺は再度昇天寸前。ええいもう!という感じのメドレーもよかったし、アレンジききすぎてなんだかもうよくわかんない『Island in the sun』もとてもエクセレントだった。ちゃんとバディ堀井(Buddy Holly)も聴けたし文句ございません。なんといいますか全体的に「やりたい放題」という言葉がふさわしいファッキンナイスなライブでした。


ハナレグミ
ウィーのザーよかったねえ、もはやウィーというかもうザーって感じだねえと同行者と語り合いながらガーデンステージへ。やっぱライブといえば才能の塊ハナレグミだよな。ところが足元は泥ぐちゃのぬかるみでべっちょべちょ。サンダルとか履かなくてよかったわいとほくそ笑みながらライブを堪能。ところが堪能してると雨がジャンジャンバリバリと降りつける。少し汗ばみ震える手でカッパを取り出し、雨よ降れ風よ吹けと腰をゆらゆら。いろいろ煽ってもらってみんなおててフリフリしているのだけれど俺はフリフリできず(寝違えで)腰をゆらゆら。ちょっと疎外感を味わい、降りしきる雨が骨身に染みる味わい深い時間を過ごしたのでした。ジャンジャン!MCも演奏も歌も相変わらずすんごかったなあ。


BULLET FOR MY VALENTINE
「バレットフォーなんとかってバンドしってる?」「たぶんアレじゃないの、なんかエモコアみたいなのじゃないの」とほざきつつビール片手に休憩がてら後方にペッタリ腰を下ろしていたら、どっからどう見てもメタルでござんすという兄貴達が出てきてズッコンバッコン。ファンの方がどんどん前方に押しかけ頭をぐいんぐいん振ってる姿を目の当たりにしながらおじさんたちは顔を見合わせて呆然としていたのであった。しっかし、あんなすごいツーバスっていうんですか、シャバダバなドラムは生で初めて聴いたわ。


■サイレントディスコ
近くを通りかかって「なんだいあれ」となったので同行者に連れられ闖入。ヘッドホンつけてクネクネと無音状態の中踊り続ける人々は傍から見ればどうしたってキチガイ丸出しだが、いざ自分がやってみるとこれが悪くない。2つのチャンネルを入れ替えながらクネクネ。そうしているうちにこれは恥ずかしがりやの島国ジャパンの住民にはピッタリの遊びであることがわかったのであった。理由は、特にない。


Underworld
あろうことかアルマイト鍋かラストのステージまで幕張に俺は滞在したのであった。体はもう悲鳴をあげているがアホづらしてイスに座っているならどうにかなる。問題は俺がほとんどアンダーワールドを知らない、ということであった。これは10数年も前に友達とボブ・ディランのライブによく知らないのに行って、曲が始まるたびにそいつに「ねえ、これなんて曲?」と訊いていたことの再来かと思ったがちゃんと曲名をモニターに出してくれたのでとても助かった。なんで2人でやってんのにこんな爆音出るのかなあ、声量もすげえなあと思っていたらモニターに『Rez』の文字が。あ、これ知ってるかもと思っていたら続けて『Cowgirl』。あ、これも知ってるかも、と思っていたら4階席なのに他のお客さんが立ち上がってウネウネと昭和のダンスを披露してくれたのには驚いた驚いた。そしてラストは予想通り、そして唯一俺が知ってるといえる『Born Slippy』。指先だけゆらゆら動かして喜んでいたら花火がチュドーンと上がり、俺の夏は恋の花火と消えたのだった。