【南米モン遊記】8日目

イグアスを見た後も、もう少し旅は続く。
とはいえ、ハイライトは終わったのですでに達成感があり、あとは無事に帰るだけ、という気分になっているのは否めない。


今日は移動日だ。イグアスから旅の終着点ブエノスアイレスに飛行機で飛ぶ。
長距離バスは1回で十分だ。

空港はプエルトイグアスから近い距離にあり、午後便なので午前中を買い物に当てた。
しかし、2〜3時間町を散策しても目ぼしいものはなかった。
実は、昨日イグアスで、イグアスの人気土産である木彫りの動物をいくつか買っていたのだ。
結局、誰にあげるのかも定かではないマテ茶をいくつか買うにとどめた。
せっかくだから。
ところで、今夜泊まる予定のブエノスの日本人宿のオーナーの女性から、ブエノスに関する注意事項がFACEBOOKに来てた。
空港バスが停まる市内のバスターミナルはスラムの近くで危険だから、空港からタクシーを使うように、とのことだった。
なんだか、ブエノス行くのが億劫になってきた。このまま日本に直行したい。


飛行機はオンタイムに飛び、オンタイムにブエノスに到着した。
宿で一緒だったドイツ人と同じ便だったが、特に話すことはなかった。
旅のピークが過ぎたせいだと思うが、もう頑張ってコミュニケーションをとるモチベーションが湧かない。


さてブエノスに到着し、少し思案した。
オレは外国のタクシーが苦手である。だから忠告は忠告としてバスで市内中心部に行くことにした。
バスの中で、バスターミナルから地下鉄駅への道筋を何度も確認し、降りたら一目散に駅構内に直行した。


駅のインフォメーションセンターで、宿への行き方を確認したら、地下鉄でカンタンに行けそうだったので、そうすることにした。
リオもそうだったが、南米の地下鉄は思いの他清潔で、事故もなくちゃんとしている。


さて、地図を頼りに宿に到着してインターホンを押すと、なんだか高圧的なおばちゃんが出てきた。リオの日本人宿のようにゆる過ぎるのもイヤだが、矢継ぎ早に質問攻めにあい、注意事項を叩き込まれると、これはこれでイヤだ。
「お一人で間違いないですか?」
「明日、何時までいますか?」
「どこを観光する予定ですか?」
注意事項にいたっては、多すぎて全く覚えきれない。
ようやく鍵を渡されて開放された時はへとへとだ。


しかし部屋に荷物を置き、とりあえずリビングに来てみると広くてとてもキレイで設備も整っている。壁一面には大量の書籍と漫画。
DVDもたくさんある。
ソファにどっかと腰を降ろし、一息つくと、すごく快適な宿だと分かった。
きっと旅疲れした旅行者は、一日中ここで漫画を読んでいることだろう。
ここの日本人宿は当たりだ。そんなに日本人宿ばかり泊まってるわけではないが、初めてと言っていいくらいの快適レベルだ。


キッチン兼食堂に行くと、日本人の女性が1人いた。20代後半くらいだろうか。
まあフツーと言ってよい。挨拶して話していると、19時近くなってきたので一緒に夕飯に行くことになった。もう一人別の日本人の女の子も行くことになった。
こっちはあまり普通っぽくなかった。外見が、というより言動から醸し出される雰囲気的なものが。多分20代だろう。先に会った方を「さん」付けで呼んでいて、敬語だったので年下だろうと推測した。


せっかくだから「南米らしく肉が食べたい」満場一致で、肉を食べにいくことにした。お姉さんの方は、結構長く滞在していてスペイン語学校に通っているそうなので、心強い。多分、一人だったら出歩く気にならなかっただろう。


オーナーに適当なレストランを教えてもらって、15分くらい歩いていく。
予想通り、お姉さんが店員とコミュニケーションとってくれて、滞りなく注文できた。
2人の女の子は数日前にたまたまこの日本人宿で知り合ったそうだ。
年上の方は28歳で、日本の非営利団体でしばらく働いた後、海外に出て、働いたり旅をしたりを繰り返している。働くといっても大企業のオフィスワークではないと思うが、それでも海外にい続けるってすげえなと思う。
年下の方は学生で、休学して50カ国周遊しているとか。ははあんと思った。
モラトリアムってやつだな。しかし女子学生のモラトリアムは珍しい。
もう少し話を聞くと、現在大学5年生らしい。4年が終わるまでに進路が決まらず、そのまま留年したら、親に「海外でも行って来なさい!」とチケット渡されたとか。
本人は全然観光とか興味ないのに。


通り一辺倒の内容を話した後、話題は「男性ストリップ」になった。2人は前々から次の日の夜、行く予定を立てていたらしい。
実は「男性ストリップ」はブエノスの隠れ名物で、これを楽しみに来る女性も多いとか。
欲望むき出しで語っている2人を見ていたら、リオの日本人宿で風俗めぐりをしていたナントカ君のことを思い出した。
あの時は「海外に行くと性欲に関するタカが外れる男が多いなあ」と思っていたが、
別に男性に限らないかも知れない。
肉は美味しかった。けどものすごく、というわけではない。
日本よりちょっとコスパが良いくらいだ。
問題は、量が多く食べるのに時間がかかるのだが、冷めた肉は不味いということだ。


店を出ると、凍える寒さだった。
イグアスは夜もちょうどいい気候だったが、ブエノスは晩冬らしい寒さだ。
風邪引かないことを祈る。


宿はヒーターが効いていて暖かい。
お湯を沸かして、早速イグアスで購入したマテ茶を飲む。
まだ美味しくは感じない。苦い。
しかし暖かいお茶は身体に染みる。


暖かくて勢いの良いシャワーを存分に浴びて、
フーカフーカのソファで漫画を読みながら、しばし寛いでから、眠った。