【南米モン遊記】2日目

①空港〜宿


空港で荷物をピックアップすると、ひたすら周囲を警戒しながら、インフォメーションカウンターに向かう。そして事前に調べておいた宿の住所を告げる。
分からなそうで、適当にあしらわれそうな感じがしてきたので、最寄りの駅を告げる。
そしたら「Oh!(「なんだ先にそっちを言えよ」的な表情で)」と合点がいった様子で、バスに乗れと言われた。空港から電車は出ていないが、バスがその駅まで行くそうだ。


今回は、初日の宿への行き方だけは入念に調べ、最寄りの駅「セントロ」から、徒歩での行き方を紙にメモっておいた。
この宿、日本人宿ZICO(ジーコ)というのだが、WEB上で行き方を丁寧に書いてくれているのだが、大抵の日本人は、WiFiがない空港では、スマホは開けないだろう。その辺の配慮が足りない。


とにもかくにも、バスに乗り、乗るときに目的地を運転手に連呼しておいた。
無事「セントロ駅」で降りることができた。
事前準備は功を奏して、宿までの行き方はすぐに把握できた。


他の場所には目もくれないで、一目散に宿に向かう…予定であったが、
途中にジューススタンドがあったので、マンゴージュースを注文した。
宿は目と鼻の先だったし、機内食がまずかったのでろくに食べていなかったのだ。
しかも絶対栄養なさそうな機内食だ。ビタミンを補充しないと。
オレは、南米の朝はフルーツから始まる、という謎の先入観に支配されているのだ。


しかしこのジュース、期待していたほど美味しくなかった。
が、これでようやく一息つけた。生き返った。シカゴでの乗り継ぎ以来、初めて心に余裕ができた。
ちなみに、この国では英語は通じない。そういうことがガイドブックに書いてあったが、マジで通じない。この場ではジェスチャーでなんとかなったが先が思いやられる。
よっしゃ行くべとリュックを背負い、店員のおっちゃんに手を振って、店を出た。
そして無事宿に到着した。


②宿


予約した日本人宿ZICOは、アパートメントの2部屋の賃貸だ。
はっきりいって、「宿」という感じはまったくない。
この宿は特にそうだ。
受付もなく、オーナーも短パンにTシャツ。ゆるいにもほどがある。


せっかくだから、海外のいわゆる「日本人宿」の特徴について記しておこう。
もちろん、オレの主観だ。
日本人宿、それはただの日本人が間貸しする、ただの家だ。
料理の素人が、海外で日本食屋を展開しているのと同じだ。
つまり宿として、快適であることは少ないのだ。
具体的には狭かったり、汚かったり、設備が整っていなかったり、などだ。
それで安いかと言えば、たいていの場合、そんなことはなく、もっとずっと快適なゲストハウスと同額だ。
じゃあ何が良いのかというと、日本語が通じること、これに尽きる。
オーナーも客との距離をとらないため、親しくなれることも多い。
日本語でのコミュニケーションに金を払うのだ
そして、特徴がもう一つ。
日本人宿に泊まる人は、日本人のいわゆる「旅人」が多い。
旅行者ではなく、旅を生活のベースにしている「旅人」だ。
これを説明すると長くなるから、機会があったら後述する。


ここまでの説明でなんとなく感じとれるかも知れないが、
オレは海外の「日本人宿」に泊まることは好きではない。
標準的なゲストハウスに泊まり、交わるなら普通の旅行者が良い。
しかし、南米の旅に限り、快適さよりもコミュニケーションに金を払った。
安心料だ。


想像以上に快適でなさそうなアパートメントの一室に到着し、問題なくチェックインを終える。
あてがわれたのは、2段ベッドの一つで、荷物も置くスペースもろくない。
時刻は11時を少々回ったところ。
この快適でない空間に長くいたくなかったので、街に出かけることにする。
お腹も減っている。そこで、観光スポットへの安全な行き方や治安情報を聞くと、
このオーナーの返答があまり役に立たない。
「うーん、確かに日本に比べれば危ないと思うのですが、どこがどうって言われると難しいですねえ」
「主な観光地は地下鉄を使えば大体行けると思いますよ。駅降りれば看板出てるから、後は分かると思います」
こいつはダメだ。ガイドブック以下だ。


どうやらオレのガッカリした表情を読み取ったらしく、
「隣にもう1室あって、そこにも日本人の旅行者がいるので、何かいい情報あるかも知れません。行ってみましょう」
隣に行くと、どうみても会社員には見えない2人の日本人の男がいた。
1人は小太りで髪を緑と金のツーカラーにしていた。こちらは話しぶりからすると
長期滞在者らしい。もう一人は痩身でスキンヘッドだった。
彼はオレと同じく今朝ついたらしい。早速パンツ一丁になっていた。


ここでは多少有意義な情報を得られた。
キリスト像で有名なコルコバードは晴れた日の午前中がいいらしい。
 この日は雨だったので、明日のAMに行くことにした。
・金曜と土曜の夜は、旧市街の一画でサンバが流れパーティーみたいになるらしい。
 ブラジルらしさを体験できるらしいので、20時に待ち合わせて行くことにした。


スキンヘッドが「駅の近くにマッサージパーラーがあって、そこに行きたい」
みたいなことを言っていた。オレも行きたいと思いつつ、まだこのスキンヘッドと2人で行動する気にはならなかったので、スルーした。後で1人で行ってみるかも知れない。
とりあえず、近くに500円くらいで食べられる食堂があるらしいので、
ランチを食べてから、観光について考えることにした。
教えられた場所に行くと、ワンプレート8レアル(大体300円)という表示があったので、「コレをくれ」と指さすと意味は通じ、用意してくれた。
味ははっきり言って不味かった。早稲田の学食でももう少し美味しい。
これで300円は、決して安くはない。


本格的な観光は明日にして、今日は近所でも見て回ることにした。
その前に少し昼寝するか、と部屋に戻って荷ほどきもそこそこに、狭いベッドに横になった。
目が覚めると、あたりは暗くなっていた。
19時くらいか?と思って時計を見ると、23時を回っていた。
20時に待ち合わせしたことは覚えていた。
しかし、この時は妙に落ち着いていて、悪いとは思いつつも、何もする気にならず、再び眠りについた。