ホットでディープでディックなあいつ



スポーツは好きだけど根っからの運動音痴なもんで、団体競技が苦手だった。
チームの中には、スポーツが得意で体育の時間だけ張りきる奴もいれば、はなからやる気の無い奴やオレのような運動音痴が必ず数名ずついるもんだ。
そうすっとプレイが始まって暫くすると、スポーツが得意な奴は
「おい、ちゃんとやれよ!」
「チッ、使えねーな」
的な罵声を下級民族に浴びせてきますわな。必ずやる。奴らは絶対にやる。
こっちはこっちでそれなりに一生懸命やって、僅かとはいえ「ほんの少しでも貢献できれば!」などと考えているのに、嗚呼しかし、思いは届かずすれ違い。この切ない胸の思い、届けて彼に!誰か!


そういうわけで、この三十年、チームスポーツは観るだけにして自分でプレイするのは避けてきた。
が、会社の仕事というのも往々にして「チームプレイ」が求められる。すっかり忘れてたが、そうだった。やる気もなく、お世辞にも仕事っぷりがいいとも言えないオレはここでも「ちゃんとやれよ!やる気あんのかよ!」と虐げられている。
体育の時間が消え、もう下らない罵倒をされることも無くなったわいゲヘゲヘ、などとほくそ笑んでいたが、まさか会社でも同じことが起こるとは…!なんという罠…!


ただ、罵倒する側の気持ちもわからないでもない。自分は真面目に取り組んでるのに、やる気の無い奴の所為で結果も成果もオジャンになれば立腹するのも当然だろう。
オレが全身全霊を傾けている「鮭缶用に鮭の身をほぐす」副業だってチームプレイが要求される。オレが没入して鮭を解体したって、一緒にやってる他の奴が『沖田浩之ベスト盤』かなんかをiPodで聴きながら、
「♪ハァ〜ン、E気持ち〜」
などと鼻歌混じりで小骨を取っていたら、それはやはり腹が立つ。胸倉掴んで怒鳴りつけるはずだ。逆の立場になればこんなもんだろう。


そんな人間の不条理に、まるで喉に小骨が刺さったかのような不快感を覚える今日この頃なのである。(鮭だけに、小骨。オレ上手いことまとめたな)

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DUM DUM GIRLS / I WILL BE (2010)


まだお元気だったんですか?と思わず呟いてしまった、天下のサブポップからの1枚。
なんともローファイな音と女性ボーカルに体はビリビリ痺れ、すっかり骨抜き。床にだらしなく横たわり、あひいあひいなどとボヤくといいと思います。
一見やる気があるんだかないんだかわかりませんが、こういう人たちに限って特にこだわりが強くてレコーディング中は「てめえ、なんだそのギターは!全然ファズってねえぞ!」「ひっ!すいません先輩!」などとやっているものです。ダルな感じで最初話題も呼んだあのパフィーだって、『私の考える音楽』というテーマで寝ないで資料を作って、毎日毎日役員にプレゼンをしていたとの噂です。ウソですけど。