『シャバダバロック100選』 #004 呪われた黒いシャバダバ

新感覚ホラー小説『わっか』(新連載)


梅雨が明け、ただただ日が照り続けている。
それでも鬱陶しい湿度を粘膜のように貼り付かせながら、香は日陰を選ぶようにビル街の隙間道を歩いていた。


香はサラリーマンだ。それ以上でもそれ以下でもない。
「仕事」というお題目の元、ただただ糞の役にも立たない「作業」を繰り返しているだけの毎日が実際のところだ。
薄汚いヘドロの沼で飼われた観賞にも堪えないボンクラ雑魚。香は自分をそう認識している。
ちなみに、香の名前は、香と書いて『スメル』と読む。本名だ。


日陰の道ばかり歩いているのは単に涼しさを求めているから、というだけではないだろう。
スメルは今そう気づき始めていた。
日陰者として生きてきた自分の境遇との親和性、また、まったくの今現在、スメルが感じている後ろめたさ――そいつが人目につかない道ばかりを選ばせている。


スメルの鞄の中には、4,5年ほど前の型のラップトップが入っている。これといった特徴もなく、名前でも書いておかなければ無くしてしまいそうだ。
“見た者は1週間後死ぬ、呪いのコンピューター”――胡散臭いことこの上ない異名のついた平凡なラップトップ。
スメルはそれを今、持ち歩き、会社へと向かっている。
面白半分、本気半分で憎たらしい上司に見せてみようと思っているからだ。


「課長、カチョー!ちょいとこの資料を見て戴きたいんですが」


胡乱な眼をこちらに向けて億劫そうに体を持ち上げる課長を見てから、スメルは誘導するように会議室へと入った。
課長なんて肩書は持ってても、こいつも俺と同じ子汚い雑魚だ。仕事しているつもりだけの態のいい作業ロボット。
「なかなかグッドでベターなアイデアを思い付きましてね」
とんだ茶番だ、スメルはほくそ笑みを堪えつつラップトップを鞄から出す。一瞬間脳裡に奴の顔が浮かぶ。
仕様もねえトンパチに巻き込まれたもんだぜ――ラップトップは課長の手元へ。
もう零れる笑いを隠す必要もないだろう。どうせ1週間後にはおさらばだ。
「お前、開いてから渡せよ」などと文句を言いながら課長は手を伸ばし、ラップトップを開く。その刹那、悲鳴が響く。
あまりの悲鳴に生来の抜け作であるスメルも思わず画面を覗いてしまう。


ス「どうしたんすか!なんすか!ギャー!これは…!」
課「ギャー!」
ス「ギャー!ホギャー!」
ス・課「ウ、ウンコー!」
ラップトップはウンコまみれだった。そして恐ろしいことに画面の中からもウンコがモリモリ出てきてとっても大変!さあどうする!
(続かない)(続ける気もない)

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Bomb Shelter Sessions

Bomb Shelter Sessions



か、か、カッコイイ!
まず、なんつってもジャケがいい。ジャケ買いでした。
グッドジャケにハズレなし。1曲目からドンズバのグルーヴで久々に大当たりで思わずガッツポーズが出るほど。「グルーヴ」という言葉がピッタリくる感じも珍しい。
アマンゾなんかでも高評価を獲得しているし、サマソニには来るらしいし、すっかりメジャーになりつつありますが、こいつぁいい。いいね!
ボーカルは黒人ですが、それからも予想できるように笑っちゃうくらいグルーヴが黒くて腰にキます。踊れなくても体をシャバと揺らして、飲めなくても酒をダバと飲む。聴いた人すべてにそんな光景を思い描かせる、そういう力があるアルバムです。力って書いて思ったけど、そう、力がありますよ、このアルバム。なんつうか腰の強さっつうか、粘っこさというか。いい相撲取りそうな感じ。