台湾の夜はワンワンニャンニャン(2日目)



2日目のことを書こうと思う。


が、その前に先日書いた1日目の話を自分で改めて読んでみたところ、なんだか読む気を無くす文章であることこの上ないことに我ながらびっくらこいたのだ。これはなぜかと考えるに、やはりオレのこの華麗なる文章力の無さに因るところが大きいことは明らかだが、あと、写真が無い所為ではないかということに思い至ったのである。
で、写真なのだが、一切撮ってない。オレは物心ついたころから大の写真嫌い。撮られることが嫌いなら自分で撮ることも大嫌い。なんだあのカメラとかいうやつは。魂抜くんだろ、どうせ。悪魔の道具だ。
しかし現代の病める島国ジャパンの日記や旅行文などではやはり写真は欠かせないようであり嘆かわしいことこの上ないが、オレも画像を導入していこうと思う。主にグーグル検索を活用して(著作権違反)。


2日目である。オレは5時頃目を覚まし、パンツ一丁の姿で黎明の中の台北の街を窓から眺めた。
「今日もくだらねえ一日になりそうだぜ!ペッ」
返す刀で同行者のスットコを布団でひっぱたいて叩き起こし、ホテル内で朝食を摂りに行く。
朝食はやはり搾りたてのオレンジジュースとバターを薄く塗ったブラウンブレッドのトーストをウマ面しながらキメたいところ。そこにトマトの入ったオムレツでもあれば完璧だ。だが残念ながらオムレツは見つからなかったので、なんか適当にそこらに転がっていた残飯のようなものをウマ面しながら腹に詰め込んだ。
「で、今日はどうするよ、ヒデ」
「基本、個人行動はどうだ、ゾノ」
そいつはいいな、とオレは請け合った。大体30歳を越えたオッサンが2人してネッチョリネチョネチョといつも連れ添っているのも気持ちが悪い。傍から見る分にもあまりいい景色ではないだろう。大体普段の生活からしてオレたちは孤高の一匹狼。オレはオレの、君は君の道を行くときなのだ。
朝8時過ぎくらいにオレはホテルを出た。まずは故宮博物院なるところに向かってみるか。やはりオレの隠そうにも隠しきれない知性が疼いている。
「で、故宮博物院とはどうやって行くのかね」
オレは横にいた同行者スットコに訊く。なんでもスットコもたまたま朝から博物館に行こうと思っていたらしい。まあ狭い台北だから、こういうこともあるだろう。
心なしか同行者に金魚のフンのようにくっつきながら博物館へ向かう。
博物館はなかなかどうして大きくて、たくさんの客が溢れかえっておった。
「これは石だね」「うん、石だね」「ピカピカしてるね」「うん、ピカピカだね」
「これは鍋だね」「うん、鍋だね」「ツヤツヤしてるね」「うん、ツヤツヤだなあ」
と知性溢れる会話を交わしながらバンバンガンガンと目ぼしい展示物を狙い撃ちする。
なんといっても豚の角煮そっくりの石と白菜そっくりの石が出色であった。


「もうここに用は無いぜ」と博物院をあとにし、それじゃあまた夜にと同行者と別れ、オレは行天宮なるところに向かう。地下鉄の駅で改札を潜ると、なぜだかまた同行者スットコがいる。
「おや、こんなところで奇遇ですね」「そうですね」「どちらに行くのですか」「行天宮に行ってみようかと」「おやおや、そいつはまた奇遇ですな、ちょうどオレも行こうと思ってました」
ということで再び2人で行天宮に急接近。「で、行天宮ってなんなの?どこにあんの?面白いの?」という質問を素早く華麗に同行者に繰り出しながら行天宮の門をくぐる。
中に入ると地元の連中がきちんと真剣になにやらお祈りをしておった。その峻厳な雰囲気を感じ取ったオレは「あ、これふざけちゃダメなやつだ」と察知し、地元民の邪魔にならぬようただただボケーッとアホ面をして突っ立っていたが、わずか3分で飽きたのでとっとと外に出る。そのあと昼食として、薬膳という名ばかりの味の全くない湯を啜って高い金を払ったのであった。


ちょうどここでオレの中の千代の富士が「体力の限界!肉体の限界!」とかすれた声で叫んだので、オレはいよいよ独りで単独ホテルに帰った。勇気ある撤退だ。
途中のコンビニで缶ビール(350mlで150円前後)を買い込み、ベッドに転がりテレビをつけるとBSで野球をやっている。これが旅行の醍醐味だよな最高だよな、とビールを啜っているといつの間にやら眠りに落ちていた。
16時半頃むくりと起き上がり、九份行きのバス停へと向かう。正直もうずっとホテルで寝てたいような気がしなくもなかったが折角の旅行だ。多少はしぶしぶながらも観光せねば。
バス停で予定通り同行者と合流し、ガッタンゴットンとバスで1時間弱揺られ揺られて九份に到着。


写真→グーグルで検索してネ!


なかなか趣のあるいい街じゃないか。だがしかしこの断続的に叩きつける土砂降りの雨はなんだ。これも旅情か。
階段の多い街をウロウロしながら旅情を高めていく。雨も旅情ならば、やっぱりこの街でも売っているソービッグなソーセージもまた旅情。すっかり旅情だらけになったオレは「こんばんは!トニー・レオンです!」と絶品のモノマネを壊れた人形のように繰り返し、さらに旅情に貢献した。
「せっかくですから」ということで謎の茶店に殴り込み、謎のジャスミン茶を2人で啜り飲む。1日目にも謎の台湾人のおっちゃんに謎の中国茶を貰っていたのだが、そのときにオレは中国茶の魅力に目覚めたのだった。そしてこの九份でも魅力は目覚めていたので、ジャスミン茶をガブガブと飲み、しかるのちにオレの下半身の狂ったソーセージからもジャスミン茶をジャバジャバと出す。そうしたら魅力に目覚めたけどまた寝たので、「ほんだらまあ帰りましょうか」と相成り再びバスに揺られて戻って、東京でも食えるのに火鍋を喰って(でもこの火鍋は美味しかった)、25時くらいに寝た。


しかし、このあと28時に起きる事になるとは、まだ2人は知らなかったのであった。いや、本当は知っていた。
(最終日に続く)