すばらしき買物の世界(どんよりと特別篇)

買物番長の貝田以蔵さんが唐突に編集部を襲来した。(取材・構成=松浪勇太郎)


「やあ、どうも」
――うわっ、何ですか突然。今日は別に用ないですよ。
「おいおい、随分な言いっぷりだね。いいじゃない、たまには。ここにいれば家でクーラー使わなくていいしさ」
――節電にうちを使わないで下さいよ。
「いいじゃない、たまには。そういや、世の中では未だに供給電力の読み方がわかってない人がいるみたいだね」
――ん、そうなんすか。
「ほら、kw とkwhの違いがわかってない人も多いみたいよ。あとよく最大供給量ってのを丁度ダムの貯水量と同じように思ってる人もいるみたいね。あれ違うよ」
――あれ、僕それ知らなかったです。
「バカ!死ね!恥知らず!腹を切って恥を注げ!この恥さらし!」
――そこまで言わなくてもいいじゃないですか。
「電力ってどっかに1日分がプールされてるもんじゃないからさ。あの最大供給なんちゃらってのは毎時の出力量のことやねん。だから別に深夜とかはそこまで節電にナーバスになる必要ないのよ」
――ほう。勉強になりました。ちょっと見直しましたよ。
「オーライ。だから真昼間はともかくそれ以外の時間でエレベーターの運転数とか『節電です!』なんて喜んで運転本数減らすのとか意味あるのか疑問なんだよ」
――電車も本数減らしてますね。
「あれも微妙だよ? どれだけの節電効果があるんだろうね。エレベーターもそうだけどちゃんと数値で示してほしいんだよな。あれ、結果的に大勢の人の時間をスポイルしてるのよ。その時間を金銭換算したらかなりのものだぜ。逆にコストが増大してるなんてこともあり得るよね」
――……。
「なんか言えよ」
――いや、さっきからマトモなこと言ってるから。どうかしちゃったのかなって。心配ですよ。
「ほら、私って勉強家だからさ」
――そんな貴方は見たくないですよ!帰ってきて下さいよ!
「これからママの悪口を言わないって約束したら元に戻ってやるよ」